♪ いつも何度でも / 名曲の秘密

『いつも何度でも』は宮崎駿監督のジブリ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌となった曲です。作詞作曲は木村弓さんで、歌も木村さん自身が歌っています。
ジブリ作品に感銘を受けた木村さんが自分の作品を宮崎監督に送ったことがキッカケで映画の主題歌に採用されることになったそうです。映画は2001年に公開され大ヒット、曲も2001年にリリースされレコード大賞金賞、日本アカデミー賞主題歌賞を受賞しています。

ライアーと呼ばれる竪琴で伴奏しながら歌う木村さんの歌声がとても魅力的で、メロディーラインを聴いているだけで涙が出そうになります。切なさと美しさがある本当に素敵な曲ですよね。
今回はこの曲の素晴らしさの秘密を探ってみたいと思います。
まず魅力の1つ目、それは曲の拍子です。三拍子にすることによってスキップするような軽快な感じが出ていますよね。特に曲後半の”♪ ラララ〜ルルルン〜ホホホッ”とスタッカートで歌っている所は心躍る心境がとても良く伝わってきます。三拍子のスタッカート最強です。

私も演奏の後半でスタッカートを入れたアレンジにしていますので是非聴いてみて下さい。

leleTAB『いつも何度でも』ウクレレ・ソロ

そしてこの曲の魅力2つ目は、コード進行です。
コード進行には、ある程度法則というものがあります。例えばG7コードの後は大体CコードやCmコードに流れていきますし、ジャズではツー・ファイブ・ワンというコード進行パターンがよく使われます。そんな定番コード進行の中でも王道と呼べるポピュラーなコード進行があります。それがカノン進行と呼ばれるコード進行です。カノンというのは一般には音楽様式のことなので、ここで言うカノンとはヨハン・バッヘルベルの作ったカノン『パッヘルベルのカノン』を指します。『パッヘルベルのカノン』のコード進行を見てみましょう。キーCのカノン進行は下図のようになります。

このコードを順番に弾くだけでもう『パッヘルベルのカノン』のメロディー・ラインが浮かんできます。印象的で美しいコード進行ですよね。これを1600年代に生み出したパッヘルベルは天才だと思います。では何故このコード進行を私達が美しいと感じるのかをもうお少し掘り下げてみましょう。わかりやすくするためにコードフォームを少し変えてみます。

押さえ方はかなり難しいくなってしまいましたが(汗)これを順番に弾いてみると音階が1つずつ下降している感じが解ると思います。
2弦の音に注目してみると、ド→シ→ラ→ソ→ファ→ミ(これだけ3弦)→ファ→ソとドの音から1つずつ下降して最後に少し上昇していますね。これに対して1弦は、2弦の音程の3度上のハーモニーを保っています。

3度のハーモニーを保ちながら1づつ音程が下降してくるところが、このコード進行の美しさの秘密なのだと思います。さらにカノン進行は、繰り返し使用することができます。これを循環コードと呼びます。カノン進行をずっと繰り返すだけで1曲が完成してしまうわけですね。『いつも何度でも』はこのカノン進行と三拍子を組み合わせることで、心踊る切なくて美しい曲に仕上がっています。

因みにビートルズの『レット・イット・ビー』SMAPの『世界に一つだけの花』井上陽水『少年時代』等、カノン進行を取り入れた楽曲は沢山あります。山下達郎の『クリスマス・イブ』では、カノン進行を楽曲に取り入れただけでなく『パッヘルベルのカノン』のメロディーそのものが楽曲の中で使われています。

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