『遥かなる影』はアメリカの作曲家パート・バカラックと作詞家ハル・デイヴィッドのコンビによって作られた楽曲です。原題は”They Long To Be Close To You”とかなり長いのですが、”Close To You”と略されて呼ばれることが多いと思います。歌詞は「あなた」のそばにずっといたいの…という内容の一途なラブ・ソングなのですが、メロディーはしっとりと落ち着いた感じで、そのコントラストがとても素晴らしい曲だと思います。私は中学生の時にカーペンターズのアルバムでこの曲に出会いました。カレン・カーペンターの歌声、本当に素晴らしいですよね。
カレンはKey=Gで歌っていますが、ウクレレで演奏しやすいように私はKey=Fにしています。
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leleTAB『遥かなる影』Close To You
今回はこの楽曲の素晴らしさを、コード進行の観点から考えてみたいと思います。下図は曲前半のコード進行を書き出したものです。このコード進行を見て皆さんはどんな風に感じますか。コードの知識が無い方も大丈夫ですので、30秒ほどじっくり眺めてみて何か特徴を見つけてみて下さい。
どうでしょうか。しばらく眺めているとB♭(ビー・フラット)というコードが多く使われている事に気づくと思います。B♭の所だけ色を変えてみると、曲前半は半分以上がB♭になってますね。つまりこの曲の印象は、B♭が重要な役割を果たしていることになります。
ここで少し難しい話になってしまいますが、曲の中には重要な役割を担う3つのコードと言うものが存在します。これをスリー・コードと呼んでします。「コードを3つだけ知っていれば曲を演奏できます」と書いてある教則本がありますが、それはスリー・コードのことを指しています。必ずしもそれは正しいとは言えませんが、概ね曲の骨子はこのスリー・コードで出来ていると言えます。
『遥かなる影』はキーをFで演奏しているので、スリー・コードはF・B♭・C7の3つになります。難しいのは、キーが変わるとスリー・コードも変わってしまうところです。例えばキーがCに変われば、C・F・G7がスリー・コードになります。こうなると各キー毎にスリー・コード覚えなければならないので大変ですね(汗)でもウクレレはキーがFとCの曲が圧倒的に多いので、その2つを覚えておけば大体なんとかなります。
スリー・コードには、3つのコードそれぞれに役割があり呼び名があります
キーがFの時で説明すると、Fをトニック、B♭をサブ・ドミナント、C7をドミナントと呼びます。そしてそトニック、サブ・ドミナント、ドミナントがどんな役割をしているかを示したのが下図になります。
『遥かなる影』はラブソングなので、それぞれの役割をラブソング的に考えてみると
ドミナント → 幸福な時間
サブドミナント → 揺れ動く乙女心
ドミナント → 決断の時
と言った感じでしょうか。
ここで改めて『遥かなる影』を聴いてみて下さい。
曲の半分以上がB♭(サブ・ドミナント)なので全体としては”揺れ動く乙女心(少し不安定)”を表現した曲だということが感じ取れると思います。特にイントロはB♭(サブ・ドミナント)ワンコードなので、ストレートに伝わってきます。さらにコードFのところでは”幸せな時間(安定)”を、C7ではドラマチックな”決断の時(不安定)”を感じられたでしょうか。
このようにコード進行を役割毎に見てみると、面白い発見が沢山あります。そしてそうやって発見したことは忘れ無いので、曲のコード進行を覚えることにもとても役立ちます。
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